失敗することを怖がらないで
日差しが降り注ぐ店内のキッズスペースには、木目の美しい木製おもちゃが並びます。名古屋市天白区に店舗を持つアルコム株式会社(東郷町)は、1200年前から受け継ぐ技術を現代のニーズに合わせ、一般向け木工商品などを開発・生産しています。
ベテランの職人さんがいる一方で、通販サイトの運営など若手人材の確保は欠かせません。経営責任者の大藏力也さんは、「慎重になりすぎず、やってみて失敗すればいいんです。ぶつかってくれたら、周りの大人が助けます」と、若者の仕事ぶりを見守っています。
採用は年に1人か2人なので、採用は手探り
1200年前からの技術、と聞くとどこか気後れしてしまいますが、店舗には温かみのあるおままごとキッチンなど身近な商品が並んでいます。
大藏さん)もともとは木工ろくろの技術を継承してきた木地師の家系で、僕は48代目。歴史を話し始めるとうち本当に長いので割愛しますが(笑)、戦後は大手玩具メーカーさんからの依頼で生産し、問屋さん、卸さんに納めることがメインでした。今は、インターネットで直接注文を受けたり、ウィル・ウッドという直営店舗で売ったりという一般向け小売りが主体です。
(一般向けにシフトしたのは)少子化や景気の影響もありますが、直接「こういうものないですか?」と言われて作るのは面白いですね。このキッチンも、シンク部分を付け替えると机になるんですよ。
大藏さん)人工大理石の加工や、玩具以外の加工もやります。(天白区の)ここの店舗の丸窓から加工場所が少し見えるようになっていて。外注業者さんにお願いするものも多いので、スタッフは今は11人。常時募集しているわけではないので、僕も(応募者の)どこを見たらいいのかわからない(笑)。約束を守るとか、嘘をつかないとか、接する中でわかることを大事にしています。立派なスキルがあると言われても、正直わからないんで。
リンクサポートからの問い合わせ。どんな感じの子が来るのかなと楽しみだった
そんな中でリンクサポートから電話があったのだと思います。どんな印象を持たれたのですか
大藏さん)最初は、障害のある人向けの支援機関とかなのかな?と思いましたけど、話していくうちにそうではないことは分かった。それでも、支援みたいなことはやったことがなくて、「こういうのは初めてなんですが」と正直に言いました。
会社に来られる(若者の)方も「どんな会社かな」と思うでしょうけど、こちらも「どんな感じの子が来るのかな」と思って、楽しみではありましたね。
見学や実習を経て採用するというのは初めてだったと思います。どのように感じられましたか。
大藏さん)実習の時には、(若者が)これまでいろいろ抱えてきた問題や苦手なことを聞いて、気をつけるようにしました。伝え方などリンクサポートの担当さんに相談したこともあります。でも、一か月もすれば慣れてきて、半年もすれば当時聞いていた苦手なことも全く気にならなくなりました。
彼女の場合、仕事は楽天の店舗からの受注処理、問い合わせ対応、ピッキングや梱包などが仕事です。パートから始めて、時間数、日数を増やしていって。1年ちょっと経った頃に正社員になりました。今は率先して何でもやってくれるから、めちゃめちゃ助かってます。
環境になじんだ時に、それまでに感じていた苦手なことが緩和したり、安心感を得て能力を伸ばしやすくなったりする若者も多くいます。
大藏さん)そうですね。(彼女も)職場や仕事内容に慣れていって、能力を広げてくれたのかも、と思います。臨機応変なことが苦手、と聞いていたけど、今は無茶ぶりをすることもあります(笑)。もちろん、ダメな時は言ってね、と伝えてありますが。
失敗はたくさんしたほうがいい。そこで手を差し伸べてくれない会社なら(若者の側から)辞めればいい
名古屋市のプロジェクトで、大学生との関りもあると聞きました。若い人と接していて感じられることはありますか。
大藏さん)みんな真面目で、失敗した経験がないのかな?と思いますね。(リンクサポートから就職した)彼女に対して思っているわけではないですが、自分の子どもやその年代の若い子を見ていても思います。失敗を失敗と言いたくないというような。イレギュラーなことに対応する経験が少ないのかな。
失敗すればいいんじゃないですか?会社も、むちゃくちゃ大損させるものや経営を左右するようなことは任せないです。だから、任されている部分で、(やってみて)アウトプットしていけばいい。もちろん相談は大事ですけどね。
大藏さんも失敗されたこと、あるんですか?
大藏さん)山ほどありますよ(笑)。サラリーマンで長く注文住宅の営業をやっていたので、もう失敗ばかり。報告、連絡、相談が行き届いていなくてお客さんの希望と違っていたり。でももう、失敗は失敗。失敗と向き合って、違うところでカバーするしかないですもんね。
就労に悩む若い人に、メッセージはありますか。
大藏さん)不器用さがあっても、それは仕方がないので、ぶつかっていってほしいなと思います。ぶつかってください。(やってみて)ぶつからないと、困っていることがわからない。
ぶつかったら、周りの大人が助けてくれます。もしそこで放っておかれたとしたら、そこにはいない方がいいです。辞めたほうがいい。
そういう意味では、うちみたいな小さい会社は目が行き届くのでいいかもしれません。周りはちゃんと見ていてくれていますよ。
アルコム株式会社さまについて
- 所在地
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愛知県愛知郡東郷町春木西前6069
- 事業内容
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木製品全般、雑貨、家具、おもちゃなどの企画・製造
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