「辛いことが言えない辛さ」を超えて〜利用者さんインタビュー【H.Yさん】〜

お気に入りのオーデコロンを持つH.Yさん。キンモクセイの香りがお気に入り

小学生のころから苦労されたと聞きました。今は信じられないくらいですが、場面緘黙はどういう症状だったのですか。

小学校の入学式から、なぜか話せなくなって。6年生まで続きました。(ひと言も話せなくなる)場面緘黙だけでなく、(動けなくなる)緘動(かんどう)もあって。給食も全然食べれない。

体育や教室の移動はできたのですか?

そういうのはできたんですけど、周りの視線が気になったりして、休憩時間も自分からは動けなかったです。家ではすごく話せるし、うるさいくらいだった。幼稚園でもみんなと一緒に遊んでいたんですけど。

どんな気持ちだったのですか

辛い気持ちはあったんですけど、それが話せないのが辛い。だから気持ちを抑え込むことが多かった。感じないようにしていた、みたいな感じです。

なんでこんな風になっちゃったんだろうって思ってました。当時は緘黙とか世の中に知られていなかったので、先生も困惑してただろうなと思います。私自身もですが。

中学に上がってからは別室登校、そのあと通信制高校に進まれたんですね。

中学では、カウンセラーの先生がいる教室みたいなのがあって、週2,3日くらい言ってました。その先生には少し話せたのと、友達もその部屋に遊びに来てくれた。小学校よりだいぶ和らいだなと思います。

高校は、通信制高校にしたのですが、中退しています。今となっては後悔がめちゃめちゃあるんですけど…。働いていた方が楽しいなと思って。

最初の仕事は当時のアルバイトだったのですね。中華料理屋さんでの接客と聞きましたが、そのころには対人的な不安はなかったのですか

その中華料理屋さんは、求人誌に載っていて応募したのですが、皿洗いの募集だったんです。だけど面接のときに店長に「ホールやってみない?」と言われて、半ば無理やりホールになりました。困ったなと思いましたけど、言い返せなくて(笑)。最初はお客さんの目も見れない、声も小さい。まともな職場だったらクビになっていたと思います。しかも周り(のスタッフ)は年配の人ばかり。後ずさりしちゃって。

2か月目のときにやめようと思ったんですよ。でも店長が止めてくれた。店長への恩返しのつもりでもうちょっとやってみようかな、と思って続けるうちに、お客さんと話せるようになりました。「おいしかったよ」と言ってくれるのがうれしくて、また来てくれるように頑張ろうって。

当時、まかないのご飯は?

ありました。ほかのパートの人と一緒に食べてました。不思議です(笑)。

その後、いろんな仕事を経験して、対人恐怖が強まったり、気分変調症の症状で落ち込んだりもあったと思います。それでもHさんが働くのはどうしてですか。

やっぱり一番はお金が欲しいから。自分が欲しいものが買えるから、です。働くことは、しんどいことの方が多いし、それは年々増えてきている気がします。年齢も上がってきて、勝手に自分自身にプレッシャーをかけてるのもあるから…この歳だとこれくらいは求められるはず、みたいな。中華やさんのときみたいに、楽しく働けるのが一番だと思うんですけどね。

(働き続ける理由として)あとは、「このままでは終わらせたくない」「しんどいままで負けたくない」という気持ちもあります。リンクサポートに来る直前まで働いていた工場が、アクの強い人がいたりで本当に辛くて。辞めた後は「もう働きたくないな」と思っちゃったんですけど、「この経験を無駄にしたくない、何としてでも次につなげなければ」と思ったんです。それで、歯を食いしばって(笑)リンクサポートに来ました。

コロナ禍が始まったころは、すごく体調も悪そうでした。同居する家族の状況も大きく変化が合って、大変でしたね。そこから「一人暮らし」が目標になったように思います。

コロナが始まったころ、祖母が急に亡くなり、父の病気が発覚して、それでみんな家の中にいて…今思い出しても泣きそうなくらい辛かったです。家の中がギスギスしていた。

少し時間が経ってきて、家は生活保護になって。仕事が決まっていないうちは夕食づくりや買い物も、やってと言われるわけじゃないけどやっていて、「このままだと一家を背負わないといけないのかな」「自分の人生が生きられなくなるんじゃないか」って思うようになりました。こっから抜け出さないとやばいって。だから一人暮らしをしたくて仕事探しを続けました。でも短期で辞めることが続いて。

今考えると、働くまでの精神状態になっていなかったんじゃないかな、辛いことがいつもの倍以上に感じていたなと思います。屋内の仕事など、閉じた環境だと、工場で働いていた時の辛さがよみがえることもわかりました。

今の仕事は、すごくアットホームでコミュニケーションもある職場ですね。苦手なタイプの職場では?と思いましたが、もう一年半続いています。

清掃の仕事を選んだのは、人と接しない、一人でもできる清掃だったら私にもできるかなと思ったからなんですが…。入ってみたら、何人かでマンションの清掃をやって、社長と一緒にお昼ご飯を食べることもあって、というアットホームなところでした。

人と長時間一緒にいるのが苦痛な私なんですが、なんで今の仕事ではつらくないのか今でもわかりません(笑)。表裏のない、いい人ばかりからかな。夏に一か月休職してしまいましたが、休むことも大事なんだって学びました。

一人暮らしを始めてからも、一年以上が経ちます。大変な面はあるけど、仕事から家に帰ってきて、お風呂に入って、缶チューハイを飲むときに自由を感じます。なぜか、実家にいたときはお酒も飲まなかったんですけどね。

働くことに悩む人に、伝えたいことはありますか

私も、働くことが苦痛だったことはあります。でも、自分のこと、あなたのことを必要としてくれる職場はあると思います。

一人で抱え込まずに人を頼って、その可能性を信じてほしいです。

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